2017.03.25
by 森田 雄志 0
IBM看板
IBMのオフィスツアーに参加した。
IBMはデザイン思考を組織に浸透させる為に、デザイン思考を最大限に実践できる「IBM Studio」を全世界に設置している。その IBM Studio の見学ツアーだ。
まず背景として、IBMはデザイン思考の浸透に全社を挙げて取り組んでいる。
技術中心のプロダクト開発から、ユーザー中心のプロダクト開発へ移行する必要性を感じ、CEOの大号令とともに、その思考方法を取り入れ始めたのだ。
2017年にデザイナーの数を1500人に増やす計画も発表し、オフィスデザインと言いデザイナーの数と言い、まさに「本気」の改革だ。
私をオフィスで案内したのも、デザイナーだった。
デザイン思考ツアーでの違和感
オフィスは、まさに「デザイン思考を実践するオフィス」と言った感じだった。
チームメンバーで仕事ができるようにする為か、オフィスはオープンスペースになっている。至るところにホワイトボードがあり、ポストイットが貼られていた。
プロトタイプを何度もつくるプロセスも実践していると、案内してくれた人が言っていた。
オフィスのツアーが終わった後は、簡単なデザイン思考セミナーがあった。
デザイナーが「共感が大事だ!」とか「このプロセスでは、アイデアをたくさん出す事が大事だ!」みたいな事を言っていて、皆でポストイットをぺたぺた貼るようなセミナーだった。
(デザイン思考では5つのプロセスというものが存在し、対象者への共感→問題提起→想像→プロトタイプ→テストの順番で問題解決をする)
皆、楽しそうに参加していたのだが、私は何か違和感みたいなものを終始感じていた。
さらに言ってしまえば、気持ち悪さや拒絶感みたいなものだ。
違和感の対象とその理由
何に対して違和感があったのか。
綺麗なオフィスで「ユーザーの事を考えよう!」と言いながら、楽しくブレストをしている姿を見た時に、何か「貴族が庶民のために課題解決をしている」ような印象を受けたのだ。
私にとって自然だと思えるイメージは、町工場のおじさんが、常にお客さんの為を想って、汗水を垂らしながら必死に働き、失敗を繰り返しながらお客さんの役に立つ製品を創り出す…といった、情熱があり、喜怒哀楽があるような人間臭い姿だ。
もちろん綺麗なオフィスなどは本質的な議論では無いのだが、お客さんの為に泥臭くやり遂げる姿の方がしっくりとくる。
もちろん、IBMの人たちが働いている姿を見たらそんな事はないのだろうが、デザイン思考ツアーの説明だけでは、何か機械的で綺麗すぎるような印象があった。
そのギャップに違和感を感じていた。
デザイン思考を考える上で重要なこと
この違和感からの学びは、「デザイン思考を方法論として説明をすると、大切なことが伝わらない」ということだ。
こういったツアーで話を聞いていると、
5つのプロセス(共感→問題提起→想像→プロトタイプ→テスト)を知って、綺麗なオフィスで作業をすると、デザイン思考を身に付けることができるような気がする。
しかし、デザイン思考の5つのプロセスを簡単に実践できる、なんてことは無いはずだ。
そんなに簡単にできたら、今頃皆がデザイン思考を使って簡単に問題解決をしているだろう。
デザイン思考はもっと人間臭いプロセスで、
「相手に対して心から共感できる素直な心、共感する為に足しげくユーザーの元に通い諦めずに何度も改善を重ねる忍耐力、プロトタイプを完璧に作らない勇気…」
といった、基礎能力やマインドが必要な作業なのではないだろうか。
セミナーを受けて、そういった事を教えられる機会はほとんどない。
そして、デザイン思考は方法論としてまとまっているので、とても綺麗でスマートなプロセスに感じる。
デザイン思考を学ぶ際には、もっと人間臭いプロセスであるという事を心に留めておくべきだ。
IBM Studioは、そういった能力やマインドを組織に浸透させる上で、とても効果があると感じた。
by森田 雄志
早稲田大学政治経済学部4年、リクルートジョブズ入社予定。アルバイトやインターンの経験からHR分野に興味を持ち、大学では人的資源管理を専攻。組織論やキャリア形成に興味を持つ。シリコンバレーでの発見を記事にしたブログを公開中。
